洗足学園中学校1年生は、総合学習の課題として「富士山のふしぎ」をテーマにした探究学習に取組んで来ました。その一環として3月に富士山麓で「フィールドワーク」を計画され、NPO法人富士山ネイチャークラブがその活動をサポートさせて頂く予定になっていました。生徒さんたちも我々スタッフも大変楽しみにしていましたが、新型コロナウイルスの状況判断で残念ながらフィールドワークが中止となりました。
フィールドワークは中止になりましたが、生徒さん達はその後も「富士山のふしぎ」に関する探究学習を継続し、その集大成として各クラスの代表グループによる成果発表会が3月17日、学園の大講堂で実施されました。250名を超える全学年の生徒様と共にNPO法人富士山ネイチャークラブの田中と舟津川も発表会に参加させて頂きました。合わせてNO.1のチームを決める「審査員」の役目も担当させて頂きました。
「日本一の富士山」は、生徒さん達の関心が非常に高く、多角的かつ多様な視点から「ふしぎ」を提起し、その「ふしぎ」が次々に解き明かされて行きました。説得力のある論調、工夫に満ちたプレゼン資料、堂々とした発表態度、などなど探究活動の成果がいかんなく発揮された発表会でした。以下「富士山のふしぎ」の一例をご紹介します。
・富士山が見える範囲はどこか
・女人禁制のなぜ
・富士山、雪の境目の正体
・富士の湧水が美味しい理由
・富士山に高山植物が少ないのはなぜか
・富士山の雲と天候の関係
・富士山はなぜ青く見えるのか
・富士山はなぜ日本の象徴なのか
・勝海舟はなぜ洗足池の近くに自分の墓を建てたのか
・富士山は噴火するか
・冬の方が夏よりも富士山が良く見える理由
・世界文化遺産に登録された理由は何か・・・歴史的検証
・富士山は山梨県? 静岡県?
・富士山の高さは測り始めてから何回も数字が変わっているのはなぜ
本気で「ふしぎ」を探し、本気でその謎を解き明かし、そして多くの仲間と共有する・・・、生徒さん達は達成感で一杯になったことでしょう。
発表会に続き私共から富士山についてレクチャー(講演)させて頂きました。
第1部「富士山講話」・・・富士山を学んで自然のことを考えよう <富士山の成り立ち、植生、動物、湧水、バリバリの活火山、環境問題など>
第2部「命を育む森 青木ヶ原樹海」・・・自然の仕組を知ることから始めよう <樹海の成り立ち、溶岩洞穴、植物、動物、菌類、命をつなぐ自然の仕組など>
生徒さん達は富士山について相当な調査や分析をされてきましたが、この講演で更に理解を深めることが出来たら幸いです。将来どんな職業に就こうが自然と無縁でいることは出来ません。今後、生徒さん達が「自然にどう向き合って行くか!」「自然にどう関わって行くか!」そんな期待を胸に学園を後にしました。
*講演の様子を写真でご紹介いたします。
参考情報>
洗足学園中学高等学校様のサイト情報
https://www.senzoku-gakuen.ed.jp/
<リポート 田中>
紅葉が始まった富士山のスバルライン五合目へスタッフと行ってきました。この数週間ですっかり秋の景色に変わり、紅葉が美しい季節になりました。
歩き始めは五合目付近は霧の中。富士山頂は残念ながら拝めず、斜面を彩るイタドリやオンダテの草紅葉も見えません。ただ、落ち葉の遊歩道の脇には、ナナカマドのきれいな赤い実と同じく赤く染まった葉、黄色くなったカラマツなどの紅葉を楽しむことができます。
帰り際には、待望の富士山が顔を出し山肌の草紅葉も見事でした。紅葉は一気に進み、富士山五合目お中道散策は見ごろを迎えています。
<リポート:関口>
自然体験活動のプログラムとして、長年「草木染め体験」を提供してきました。しかし色の出し方については、諸条件が影響して、必ずしも狙った色が出せるかと言うと、そうはなっていません。とりわけ、媒染液の種類によって発色が大きく異なることが分かっています。
試行錯誤の積み重ねが重要で、今回は染め液に「セイダカアワダチソウ」と「クリの渋皮」を、媒染液に「ミョウバン」と「石灰液」を組み合わせて見ました。
結果は写真の通りです。
左から 「セイダカアワダチソウ」と「ミョウバン」「セイダカアワダチソウ」と「石灰液」「クリの渋皮」と「ミョウバン」「クリの渋皮」と「石灰液」の組合せです。こんなにも発色に違いが出ます。不思議ですね。(本番では模様を付けますので更にイメージが良くなります。)
皆さんはどの色がお好きですか?
<リポート:田中>
まだまだ残暑が厳しい中、富士山お中道へ下見に行きました。さすが、標高2300メートル、吹く風もさわやか、空気も澄んでいて、大いにリフレッシュできました。
この日はお中道の御庭、奥庭と呼ばれている場所を歩きました。コメツガやカラマツなどの針葉樹が、高く伸びるのではなく、横に枝を伸ばした様子は、まるで大きな盆栽のよう。しかし、これは、富士山に吹く北西の強い風と、雪のために木が耐えに耐えた姿なのです。
そして、この御庭付近のみどころには、火口列もあります。富士山は山頂からだけでなく、山の中腹からも噴火していて、その火口列が山頂にむかって、6、7個見られるのです。当時のダイナミックな噴火の様子を想像しながら歩くことができます。
溶岩には地衣類やコケが生えていて、土壌ができていないところから、コケ類→草本→樹木への植生遷移も観察できます。地衣類のミヤマハナゴケはそっと触るとふわふわとしていて水分を含み、溶岩に水分を蓄えているのだと感じます。
暑さが早く去っていかないかとばかり考えてしまいますが、秋の気配も少しずつ見えてきました。コケモモの実が赤くなり、オンダテやイタドリ、カラマツの紅葉を楽しみにしたいと思います。
<リポート 関口>
新型コロナウイルスの影響で、今年前半の自然体験活動はほとんどがキャンセルとなりましたが、後半となる9月以降は少しずつ活動が動き出します。
今日は後半戦に備えて久々の樹海でスタッフ下見を行いました。学年ごとに学校で履修する内容を想定しながら、それらの内容と出来るだけ関連付けて現地現物を観察して頂きます。
溶岩台地の生立ち、そこに息づく植生やその変遷、動物たちの営み、それらがお互いに関わり合って共存している様子が観察出来ます。やはり樹海の自然は生きた教科書そのものですね。
残年ながらこの時期は、花の種類は少なく、確認出来たのは「ヒメミヤマウヅラ」だけでしたが、樹海で「フクロウ」の羽が見つかったのは珍しい出来事でした。それにしても綺麗な羽ですね。
9月以降、自然体験ツアーを実施するに当たって、サポートする我々のコロナウイルス対策も万全を期さなければなりません。日々の検温や体調の記録を継続するとともに、生徒さんを含めたソーシャルディスタンスの取り方、フェースシールドの装着など、新たなツアーのスタイルがスタートします。
<リポート 田中>