2024年7月9日 杉並区立高井戸第四小学校5年生 山中湖移動教室「明神山登山」
昨年に引き続き、今年も6月から10月まで、杉並区立内の小学校に在籍する5年生が、野外活動などで山中湖村を訪れています。夏休み前の1学期最後の学校、高井戸第四小5年生82人の明神山登山を、富士山ネーチャークラブがサポートしました。「高四」は今の6年生に続き2年連続の明神山登山。昨年一緒に登った本橋忠旗校長も元気に同行です。
子供たちとガイドが挨拶して、いよいよ出発です。

天候は曇り、でも雲は富士山のはるか上空。富士は堂々としたその姿を見せています。日差しも弱く、梅雨明けを思わせる連日の猛暑がウソのように絶好の登山日よりとなりました。
登山口:目指す「明神山」山頂が見えています。

歩き出して約30分。斜面の草地を削ったような細い道が何本もある場所に差し掛かりました。朝晩、シカやイノシシが行き来する「けもの道」です。「ほら、地面に足跡があるでしょ」と説明したとたん、「シカだ~」「ホントだ~」と子供たちの叫び声。仲間もガイドも斜面の上に目を凝らしましたが、一瞬にして走り去ってしまったようでした。数人とはいえ、本物のシカに出会えたのはラッキーでした。
けもの道を確認する生徒たち

この道沿には、サンショウとゴマキが数多く自生しています。「葉の匂いをかいでごらん」。花ではなく葉なのか、みな恐る恐る鼻を近づけます。でも、柑橘系の爽やかな香りのサンショウに驚いた表情。鰻にかける粉と知り、再度香りを嗅ぐ子もいました。ゴマギは名前の由来通り、ゴマのような甘い香りが漂います。その一方で、毒性があるマムシグサの存在も教わりました。花は既に終わり、秋には真っ赤になる今は緑色の実をじっと観察しました。
いきなり1人ずつしか登れないほど道幅は狭くなりいよいよ登山開始です。「滑るから気を付けて~」と後方の仲間を気遣う声が飛びかいます。



尾根筋に出ると、傾斜が強くなりはじめました。ひたすら無言の子、大はしゃぎに元気な子も、「登るしかない」と気合は十分のようです。それでも「疲れた~」と早くも弱音が聞こえてきました。「頂上で食べるお弁当は最高だよ」と励ましながら高度をどんどん稼ぎます。


6月から始まった今年の明神山登山。毎回、同じ植物や生き物に出会えるとは限りません。今回はたくさんの生き物に出会えました。薄緑色の体に透明の羽根が美しいハルゼミ。5個の抜け殻が密集して付いた木もありました。ミヤマクワガタのペアを見つけた生徒さんは、秀逸の観察力。それもクワガタの王様ですので、先生たちも、もちろんガイドも興奮気味に写真を撮りました。ありがとう。


更に都会ではほぼ見かけない甲虫のオオヒラタシデムシや、地面をはう赤いクモ。体長約5センチのカラフルな毛虫の不思議そうな動きに目を凝らします。細長い茎にたくさんの白い花を付けたバイケイソウが満開です。「美しい花には気を付けろ」で、これも毒があってシカも食べません。大きなアカガエルも捕まえました。「水のない山になんでいるんだろう」。とっさに疑問が浮かぶのはさすが。山の面白さを感じたようで、ガイドもうれしくなりました。



急登も終わり、緩やかなアップダウンの登山道を進みます。ちょっと余裕が出てきたのでしょう、仲間同士の歌声が楽しそうです。

歩き出してから約2時間半、森の先にある木々のすき間に、強く明るい光が見えます。標高1,291㍍、明神山の山頂は目の前です。ガイドの「その先が頂上だよ」のセリフを聞いたとたん、みな猛スピードで掛け登りました。
山頂は広く、背の高い木々に覆われていた樹林帯の登山道と大違い。天空を遮るものは何もありません。気になる富士山も雲に覆われず、朝と変わらぬ姿で待っていてくれました。大きな富士山と眼下の山中湖に「きれい」の連続した声が聞こえてきます。クラスの集合写真にも笑顔、笑顔が並び、待ちに待った昼のお弁当も格別なおいしさです。


登りの長い尾根の途中「また、この道を下るの」の質問がありました。「違う道を下るし、早いよ」と聞いても、その時は想像もできませんよね。その下山の始まりです。山頂から垂直の角度で下りる急坂が待っていました。江戸時代の宝永大噴火で降ってきた「スコリア」は下山直前に習いましたが、その小石の上を靴が滑る、滑る。上手に靴底を地面に付けてリズムよく下りる器用な子供がいる一方、小石に足を取られた子供たちは、すってんコロリンの連続。ならばと、最初からお尻を付いてズルズルと下り、「これなら恐くないし、けっこう楽しかった」の感想がありました。子供ならではの発想です。下りてしまえば急坂も短いもの。一気に斜面は緩やかになり、約4時間の登山も終わりが近づきました。




子供たちにとっては、体も気持ちも「山あり、谷あり」の連続だったことでしょう。目と耳と肌で感じた今回の登山がずっと心に残ることを願うばかりです。後半の2学期も元気な5年生に会えるのをスタッフ一同、今から楽しみにしています。
<文、写真 関口純>