2024年7月25日 静岡大学教育学部附属浜松小学校 5,6年生「林間学校」自然体験活動
今年も、附属浜松小学校5,6年生が富士山麓で「林間学校」を実施しました。この初日、7月25日に4つのコースに分かれて自然体験活動を実施しました。
①富士山宝永火口コース
②富士山二ッ塚コース
③鳴沢氷穴―紅葉台コース
④精進湖自然観察路コース
それぞれのコースでの活動の模様をご紹介いたします。
①富士山宝永火口コース
富士山富士宮口五合目に到着したのは5,6年生35名の元気な子供たち、バスを降りてくると、「ここは涼しい!」の第一声が。浜松はこの夏、猛暑が続いているとのこと、先ずは、富士山五合目(標高2400m)の爽やかな世界が実感できました。
今年から富士宮口でも「登山者登録」が義務化されました。事前申請を済ませ、全員が登録済みの証しとなる「リストバンド」を付けて、いよいよ出発です。
新六合目手前では、大きな溶岩流が観察出来ます。ここで休憩を取りながら、富士山の成立ちや溶岩の特徴について学びました。
新六合目から、やや下りながら、宝永火口を目指します。この道の両脇には森林限界に力強く生息する高山植物が目を楽しませてくれました。
高山で、かつ乾いた火山台地でも繁殖できる植物の特徴は、長い根っ子、太い根っ子、そして光合成を盛んに行うことが出来る植物です。これら先駆植物がやがて樹木を呼び込み、樹林帯へと進化していきます。この六合目の登山道から、こうした植物の変遷がはっきりと観察出来ました。
そして、宝永火口の稜線まで進むと、そこには大迫力の光景が目に飛びこんで来ます。「わー、すごーい!」、大きな歓声が上がります。1707年に爆発した「宝永火口」です。3つの噴火口が並び、最後に噴火した第一火口は直径1200m、富士山頂上の噴火口(直径780m)より遥かに大きく富士山で一番大きな噴火口です。
火口の稜線から、火口の底を目指して下っていきます。
噴火口の底に到着すると、ガイドとディスカッションしてノートに記録するグループ、大きな溶岩に登って迫力を楽しむグループ、静かに座ってその場の光景を楽しむグループなどなど、思い思いにその場での時間を楽しみました。
ゆったりとした時間を過ごして後、帰途に付きます。第一火口の底から稜線まで登り、第二火口の稜線を下りていきます。そして宝永火口とお別れする分岐まで来ました。ここから樹林帯のコースを下り富士宮口五合目に戻りました。
登山の最中、多くの子供たちから色々な感想やコメントを聞くことが出来ました。
・生まれて初めて雲を食べました。味は?
・想像していた富士山と全く違った。富士山のイメージが変わった。
・火山岩にも色々な形、色、組成密度があることが分かった。溶岩をもっともっと勉強したい。
・火山岩の中に黒曜石が必ずあるはずだ。見たい!
・この場所はとにかく気持ちが良い。ずっとここにいたい。
・ここの空気はとても美味しい。空いたペットボトルにここの空気を詰めて家族へのお土産にします。
このコースを選択した子供たちへ、
今回の体験で、どんなことに気づき、どんな発見、学びがありましたか? 自然の仕組を学んでもっともっと自然を好きになって下さい。
<リポート 田中留雄>
②富士山二ツ塚コース
富士山の静岡県側にそびえる、二ツ塚(標高1,804㍍)登山に参加したのは5,6年生38名。昨年5年生の時に同じコースを登った子供たちも5名ほどいます。我々ガイド2人とも1年ぶりの再会です、嬉しいですね。
登山口に建つ鳥居の前で手を合わせ今年も無事の登山を祈願し、標高差364㍍の登山の開始です。約20分後、大石小屋に到着し突然視界が開けました。「見えた、見えた二ツ塚だ」。経験者の6年生が叫びました。「遠いなぁ…」。初体験の子供たちには当然の印象かもしれませんね。
山頂からは厚い雲がたちこめ、富士の頂は見えませんが、目指す二ツ塚と、その奥に宝永山が見えます。江戸時代の宝永大噴火で降り積もった小石(スコリア)が山の斜面を覆い尽くしています。小石のメカニズムの説明には皆、熱心に耳を傾けてくれました。黒(灰)色、赤色でもない石の一部だけがキラキラ輝くスコリアに興味を持った子供もいました。その観察力に感服し、理由を調べるきっかけを投げかけてくれました。
登山道は徐々に傾斜が強くなります。後方からは白い霧が駆け上がり、あっという間に視界を遮りました。「俺たち雲の中だぜ~」。ほんの1週間前、家族で富士山頂まで登った子供が仲間に教えてくれました。「でも、気持ちいい」。ヒンヤリした霧が疲れを和らげてくれます。登り出して約1時間半、目指した二ツ塚に登頂です。霧もいつしか遠ざかり、宝永山が近くに見えます。広い山頂に疲れも忘れ、走り出す子供たちの姿もありました。
下山は同じコースですが、途中から登山道に平行した脇の斜面を300㍍ほど下りました。登山道とは違い踏み固められていないので、ひと足で靴一足分以上前に進みます。これこそが「砂走り」です。登山道から脇にそれないようガイド1人が先行し、皆一斉に走り出しました。止まりたくても勝手に足が前に出てしまい、まるで飛んでいるかのようです。今年もこのコースを選んだ6年生たちの最大の楽しみでもあったようです。
下山後、「砂走りが最高だった」の声が一番聞かれました。そんな中、初参加の5年生女子の感想が心に残りました。「苦しくて登る意味があるのかな、と思っていたけど、山頂に着いたら景色も違うし、登り切った達成感で、心が満たされ最高でした」。
ガイド冥利に尽きますね。今年参加した5年生に伝えます。「来年もまた一緒に登ろうね。また違った景色や楽しみが待っているよ」。
<リポート 関口純>
③氷穴―紅葉台コース
暑い中、バスは鳴沢氷穴に到着。バスの中で昼食をとったあと、まずは氷穴に入洞しました。足元や頭に気をつけながら暗い溶岩洞穴の奥へ。「本物の洞窟だ!」と賑やかに、慎重に進む。奥には氷の柱もあり、外の暑さが嘘のように涼しい。
氷穴から出ると、次は青木ヶ原樹海。
樹海の成り立ちや植物の遷移などを話すと興味津々。いたるところにある溶岩を手に取って、色や重さや感触を確かめていました。樹海の特徴とも言える苔についてもみんなで意見交換。苔の知られざる暮らしぶりを知って感心しました。
樹海を抜けると、次は紅葉台へ。 途中、カミキリムシ発見。最近は虫を触れる人が少なくなってきているなか、ひとりの男子がつかんでみんなに見せてくれました。
ここは紅葉台手前の休憩ポイント、木々の間からから迫力の富士の雄姿が見えました。
暑い中、休み休み歩いて、紅葉台の展望台に到着!暑いけど風が少しあって心地よい。展望台から稜線が伸びる富士の造形美を堪能しました。みんなで元気に記念写真も。
ここまでけっこう時間がかかったこともあり、今回は無理して三湖台まで行くことなく、ここから下山することに。
下る途中の広場で休憩をしていたら、カナヘビ発見。みんなで2匹捕まえた。虫を触るのは苦手でもカナヘビはほとんどみんな大丈夫。自宅で飼っているという女子もいました。カナヘビを連れて帰りたいとのことでしたが、今日のところは放してあげて下山。
みんなで元気に下山すると、木曽馬牧場の馬が迎えてくれました。
<リポート 上岡雅之>
④精進湖自然観察路コース
22名の子供たち、このコースを選んでくださってありがとう!お待ちしておりました。
精進湖からの『子抱き富士』もにこやかに迎えてくれています。皆さまの歓声が上がりましたね。
ここからレクチャーを始めます。
富士山はどうやってできたのかな?精進湖はいつできたのかな?
さあ、湖の向こう側、青木ヶ原珠海の探索が始まります。
千年以上前に富士山の中腹から流れ出た溶岩流・・・・
樹海の遊歩道はここでしか見られないような不思議な形の溶岩がゴロゴロしていましたね。
どうしてこんな形になったのかな?富士山の不思議を楽しく学びます。
湖が見えるよ!
湖畔に出ると、オトギリソウが咲いています。
『わあ、キレイ!』
ここからの富士山は雲に隠れてしまっていたね。
だけど精進湖をバックに記念撮影。
さらに遊歩道を歩きながら色々なものを発見。シカが木の皮を食べた痕、ムササビが葉っぱを食べた痕、ここには色々な動物がいるんだね。
やがて、この日のハイライト、『釜畑』という不思議な名前の場所へ。
なんとここは、
千年以上も前に、富士山の溶岩が『セノ海』という大きな湖に流れ込み、ここで水蒸気爆発を起こしたんですって。富士火山のスケールの大きさに、皆さま感動です。
なんとこの場所には、クルミ(オニグルミ)の木が一本。
『梅の実みたい!』
『クルミの実ってこの中に入ってるんだ!』
落ちていた実を拾ってくれた生徒さんもいましたよね。皆さま『クルミアレルギー』はひとりもいらっしゃらないということで観察しました。リスが半分に割って美味しいところを食べたクルミの実も拾ったよね。
戻りながら、湖畔のベンチで最後の休憩。
…とここで
なんと、パズルみたいな溶岩を発見してくれた方が!
これ!最初にお話した、『枕状溶岩』ですよ!
みんな集まって来て、観察します。
『どうしてこんな形になるの?』
それはね、溶岩流が湖に流れ込むとどうなるんだっけ?
『固まる!』
そう、それからね…
ここは生きた教材がゴロゴロしています。
最後のまとめ、
一人一人に、今日一番印象に残ったことを言ってもらいました。
『空気が美味しかった!』
『子抱き富士、見れて良かった!』
『動物がたくさん棲んでいることがわかった』
『シカが木の皮を食べるとは知らなかった!』
『富士山が色んなところから噴火するとは知らなかった。』
『溶岩の色んな形と出来方がわかって良かった。』
一人一人の心に、今日の思い出がいついつまでも輝いていることでしょう。
<リポート 舟津川由利>