2024年9月16~18日 開智日本橋学園中学校2年生 「森のフィールドワーク」
〝今年はどんな質問が飛び交うかな?〟 と、毎年ワクワクさせられる、開智日本橋学園中学2年生の「森のフィールドワーク」が9月16日~18日に行われました。「森のフィールドワーク」は開智日本橋学園の教育の柱である探究学習の一環です。昨年から富士山麓「西臼塚ふれあいの森林(もり)」にフィールドが変わり、また新たな発見が次々と生まれています
本番前の9月6日にはNPO法人富士山ネイチャークラブの田中が事前学習講話を行い、森の様子を紹介いたしました。富士山は活火山ですが、山頂噴火は2200年前が最後で、その後は山腹からの噴火のみであることなどを学びました。西臼塚も側火山のひとつですが、こちらはもっと古くて8000年ほど前に噴火したところです。噴火後に森ができるまでの変遷やこの地で見られる植物や菌類などについて紹介いたしました。
■1日目
本番当日、現地にバスが到着するといよいよ初日の活動がスタート、駐車場となっている広場で開校式が行なわれました。実行委員長の力強い宣言があり、副校長先生からは活動に向けた期待のお言葉がありました。
猛暑の夏は9月に入ってからも続き、16日もはっきりしない天候になりましたが、問題なく活動ができました。西臼塚の森はコケむした緑の森です。ブナやミズナラの大木も目立ちます。カエデ広場、ブナ広場という名前が付けられた広場があり、うっそうとした森林が私たちを包み込んでくれました。
先ずは、グループ単位で「ガイドウォーク」を実施。この森の全体像を把握していきます。「トトロの森だ!」「なんて静か」「コケがきれい」「空気が違う!」「キノコ見つけた!」
生徒たちからも感動の声があちこちから聞こえました。小高い丘のようになっている西臼塚にも登り、周辺の様々な樹木や噴火口の形などを確認しました。
都会と比べたら、コケの緑の濃さ、キノコが連なって生えている様子は印象深いことでしょう。探究への第一歩「疑問探し」はコケやキノコに魅了されるところから始まりました。
ガイドウォークの後は、班ごとの活動に移行します。探究心の高さを原動力として、より多くの疑問を発見し、その内容をひたすら書き出していきます。また、それぞれの疑問の対象と周辺の関係性も考えながら対象をよりミクロに観察して行きます。森を幅広く、そして深く見ていくことで疑問をより多く発見し、それぞれの疑問の精度を高めて行きます。
フィールドでの活動を終え宿に戻ると現地で得た情報(メモ)を班メンバーで共有し、班としての方向性を論議し、疑問を絞って行きます。「自分たちが本当に知りたい疑問はこれだ!」に辿りつくまで論議を続けます。
この間、ガイドスタッフは通称「質問部屋」で待機し、各班の質問に対応、また進め方などについてもアドバイスをさせて頂きました。
この夜の後半は、最終的に絞り込んだ「疑問」の仮説を論議します。現地で集めた情報を基に徹底的に「考え」「議論して」仮説をまとめていきます。今日一日の活動の大きな山場となります。最後に明日の検証計画をまとめ、21:00、初日の活動が終了しました。
各班の「疑問(検証テーマ)」をピックアップしてご紹介します。
・腐葉土の柔らかさは何によって決まるのか?
・地衣類が多く付く木の種類は何で、どこに付いているか?
・噴火口の近くと噴火口から離れた所の植生にどんな違いがあるのか?
・木に生えているコケの位置とその周りの環境との関係性は?
・スコリアが多く含まれる土にはなぜ植物が少ないのか?
・キノコが生える最適な場所は?
・下草の育成は周囲の何によって影響を受けているか?
・アブラチャンの生えやすい環境と生えにくい環境の違いは何か?
・ギャップの50年前と100年後を科学的に定義しデザインしよう。
などなど、多様な「テーマ」が提起されました。
■2日目
天候は曇り空でしたが、再び「西臼塚」の森へ、霧におおわれる時間帯もあり、幻想的な森の中の活動になりました。
昨日論議した「疑問」「仮説」の検証作業に集中します。限られた時間の中で生徒たちは大忙し、対象の観察が足りなかったチームはさらに検証ポイントを追加するなど、積極的に動き回っていました。チドリノキ、ヒメシャラ、ミズナラやブナ、コケやキノコのようすを観察するチーム、はたまた、先生の美声を活用して、森の中で音の響きを検証するチームなど、個性的な課題もありました。
空に向かって大きな穴が開いたようなギャップの広場では、この場所の100年後をデザインする課題に挑戦するチームもありました。
珍しいキノコ“冬虫夏草”も発見しました。(カメムシタケ)
フィールドでの検証時間が終わると、全員がカエデ広場に集合し2日間に渡った森での活動を終了しました。
宿に戻ると初日と同様、室内探究が始まります。検証した内容(データ)を体系的に整理し、「検証結果」、「考察」から「結論」に至る過程を論理的に組立てて行きます。更に本年度からは、それぞれの探究成果が社会的にどのような意味を持つのか、影響があるのか・・・すなわち「探究の拡張」についても論議されました。
この場では、理科(自然科学)で学んだことだけでなく、社会科、数学、物理、その他の教科で学んだ知識、体験も含めて幅広く考えることが求められます。
初日同様、室内探究の時間帯は、ガイドスタッフが「質問部屋」で待機し、生徒たちからの質問、相談に対応いたしました。
発表のシナリオがまとまると、発表資料の作成に取りかかります。メンバー全員が協力して書き上げて行きます。
明日はいよいよ「発表会」です。 発表に向けた役割分担等を確認して21:00、2日目の活動を終了しました。
■3日目
今日の「発表会」は複数の会場に分かれて実施され、各班の発表が続きまました。各班の発表が終了すると、闊達な質疑応答で、それぞれの探究テーマを会場全体で共有しました。
本年度から新たな課題となった「探究の拡張」は、この活動成果が社会的にどのような影響をもたらすかを展望するもので、一段と意味深い探究学習に進化しました。また、将来の姿をデザインする新たな視点のテーマも取り上げられ、活動の幅が益々広がっています。
発表会後の閉校式では、実行委員長から「活動の振返り」について報告があり、ご担当の先生からは活動全体を「総括」するお話しがありました。最後に、副校長先生から活動の講評と共に「探究学習(フィールドワーク)が最終的に目標としていることは、一人一人が幸せになること」とのご挨拶がありました。
開智日本橋学園中学2年生の「探究学習(森のフィールドワーク)は、創立以来回を重ねてきましたが、毎年毎年改善が加えられ、進化しています。この活動に参加している我々ガイドスタッフも常に新しい課題と向き合って行く必要があります。
「一人一人が幸せになること」を目指して、開智日本橋中学の生徒さん、先生方と一体になって共に進化していきたいと思います。今後とも富士山の素晴らしい自然の中で開智日本橋学園中学の生徒さんたちと一緒に活動出来ることをスタッフ一同大変楽しみにしています。
最後になりますが、「森のフィールドワーク」の準備から3日間の活動まですべてを企画運営された「実行委員会」の皆さんに敬意を表するとともに深く感謝したします。活動中、常に全体を見渡しリードする姿は素晴らしかったです。
<リポート 関口東子>
開智日本橋学園中学校 サイト情報