2025年5月19日 横浜市立松本中学校2年生「鳴沢コウモリ穴洞窟探検」
新緑が美しい5月、横浜市立松本中学校2年生の生徒さんが富士山麓にいらっしゃいました。その初日、青木ヶ原溶岩台地の東端に位置する「鳴沢コウモリ穴群」で洞窟探検を行いました。
ここは、人の手が入っていない自然の溶岩洞窟群で、大小の溶岩洞窟を色々な視点から観察し、体験することが出来ます。今回は4つの洞窟探検ポイントと2つの自然観察ポイントを巡って頂きました。その活動の模様をご紹介いたします。
■ポイント1(溶岩洞窟)
洞窟に入る前は、どきどきした様子で入洞をためらう生徒さんもいましたが、中に入ると予想外に広かったせいか、安心してどんどん奥に進むことが出来ました。このエリアでは最も大きな洞窟です。洞窟全体の造形や溶岩棚を観察、また天井にぶら下がる樹木の根っ子やキノコの菌糸、キラキラ光る水滴などが確認できました。天井に磁石がくっつく実験も・・・なぜくっつくの? 皆で考え、意見交換しました。洞内の冷気に耐えられず、早々に出口に向かうチームもありました。



■ポイント2(溶岩の学習)
生徒さん達は中1で「溶岩」について学んでいます。火成岩の六つの岩石の種類をご存じでした。・・・が、富士山の溶岩は玄武岩で、流れやすいからこんな洞穴ができること、だから富士山はあんなに綺麗な形をしていること、玄武岩は原初マグマでマントルが溶けた生まれたてのマグマがそのまま地上に出て来てしまったという特異な溶岩であること、海のプレートは玄武岩であること、月もまた玄武岩であること、などなどをお話すると、感嘆の声を上げられていました。現物を前に、より実感を持って富士山の溶岩を学んで頂けたと思います。

■ポイント3(溶岩洞窟)
ヘルメットに手袋と、完全防備の生徒たち、いよいよ「ポイント3」のスタートです。入り口から急な斜面を3メートルほど降り立った場所は、大人でも十分に立てる空間です。
「本番はこれからだよ」のガイドに声に、みな少々緊張気味の表情に変わりました。ヘッドライトで照らした先は低い天井があるだけで、その先は何も見えません。ライトの明かりだけを頼りに頭を低くして少し進みます。「ここで話をします」。その場で歩みを止めた生徒のうち2人が、左側にある長いベンチのような溶岩に座りました。「その座った溶岩が話の主役だよ」。に驚きの顔が。長い俵のような溶岩が「溶岩棚」です。重みで壁から丸まりながらはがれ落ちた溶岩だけに、ベンチにように座ってしまうのも理解できますよね。
「3・2・1、ハイ!」のかけ声で一斉にヘッドライトを消した瞬間、「キャー、ワー、オー、すげー、恐い」の声が洞窟内に広がりました。まっ暗闇を体験した瞬間です。都会で暮らす生徒たちには、貴重な思い出になったことでしょう。


■ポイント4(溶岩洞窟)
この洞窟の奥行きはあまりないが、出口が最も狭く、体の大きな生徒さんにとってはとても苦労する洞穴です。それでも諦めずに挑戦する体格の良い生徒さん。この間、クラスメイトから励ましの声が続きました。多くの励ましに応えて無事地上に上がってきたときは、仲間から大きな拍手が上がりました。「最初は無理だと思ったが挑戦し、達成出来たときは、達成感で一杯になった」「この先、こんな体験は出来ないと思うから、貴重な体験だった」「ここが一番きつかった!」などなど、多くの感想が寄せられました。


■ポイント5(野生動物の学習)
実際のシカ、イノシシ、カモシカの頭骨や角、キバ、足、クマのツメなどを手で触ったり、毛皮を撫でて、その感触を確かめました。そして実際に鹿の角を自分の頭にのせて「ひえ~、こんな重い角を頭に乗せて森を駆けまわるのか~」と、ずっしりとした重さを実感しました。なかな経験できない貴重な時であったと思います。今後、色々な動物との出会い、あるいは写真や映像で見るときも、今まで以上にそれらの動物たちへの愛着を感じるのではと思います。


■ポイント6(溶岩洞窟)
この洞窟は天井が低く、洞内の移動は「赤ちゃん歩き」になります。小さな穴から地下に入って行くと歓声が上がりました。「不安だったが、ここが一番楽しかった」「また、潜りたい」「ライトを消すと、天井から地上の光がわずか見えた」「しばらくここにいたい」、そして「ここで暮らしてみたい」と奇想天外な感想も飛び出し、感動の体験となりました。




■終わりに
目の前の課題を諦めることなく、感性を研ぎ澄まし、体の使い方を工夫し、論理的思考も活用して、果敢に挑戦しクリアーして行く生徒達の姿はとても感動的でした。自然体験活動の醍醐味を感じて頂けたなら大変嬉しく思います。もっともっと大きな課題に立ち向かっていくこれからの君たちに熱いエールを送ります。
<リポート 田中留雄>







