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Blog, イベント報告
2023-11-10

2023年9月29日―10月1日 開智日本橋学園中学校2年生「森のフィールドワーク」

 開智日本橋学園中学校が毎年実施している「森のフィールドワーク(2年生)」が今年も9月29日~10月1日の3日間に渡って実施されました。今年から活動フィールドを富士山麓「西臼塚ふれあいの森林(もり)」に移して心機一転、多様で豊かな自然環境の中での活動となりました。

 開智日本橋学園の「フィールドワーク(探究活動)」の最大の特徴は、活動の企画運営は基本的に「生徒達の自主性(運営委員会)」に委ねられていることです。運営委員長、運営委員を中心に全生徒が自らの責任で活動を推し進めて行きます。有意義な活動となるか否かは、すべては生徒達自身の考え、行動にかかっていると言っても過言ではありません。

 本番前の9月21日、NPO法人富士山ネイチャークラブの田中が学校にお伺いして「事前学習講話」を行いました。富士山の成立ちや自然の営み(植物、動物など)などをお話しすると共に、フィールドの様子を多くのスライドでご紹介して、探究テーマのヒントにとなりそうな自然の要素をご紹介いたしました。

 講話が進むにつれて、富士山や活動フィールドへの興味が高まり、多くのの質疑/応答が交わされました。「西臼塚は噴火の恐れがあるか?」「キノコの見分け方(食/毒)は?」「どんな虫がいるか?」「ナラ枯れの状況は?」「この時期の服装は?」「森で迷子にならない方法は?」などなど、現地での活動をより安全に、かつ有意義な活動とするための予備知識を共有する場となりました。

 開智日本橋学園の探究は「現地発見・現地解決型」活動で、「疑問―仮説―検証―発表」の4つのプロセスを重視します。また、個を重視し、グループ活動で成果を最大化して行くのも大きな特徴となっています。

 いよいよ本番初日、162人の生徒さんを乗せたバスが西臼塚に到着しました。早速運営委員会の進行で開校式が行われました。委員長の力強い挨拶(宣言)から始まり、校長先生からは、この活動に向けた期待と激励のお言葉がありました。

 危ぶまれた天候も回復して、いよいよフィールドワークのスタートです。先ずは、ガイドの引率による「ガイドウォーク」を実施、活動エリアの確認と共に、フィールド内の多様な植物や動物の痕跡、地形、地質、噴火口などを確認していきました。富士山麓の自然を初めて体験する生徒さんが大半を占める中、原生林の森を満喫しながらガイドとの会話が弾みました。

 初日の後半はグループ活動に移行して、自然観察を更に深めると共に、テーマとなる「疑問探し」を行いました。広いフィールドを時間の限り巡って、より多くの疑問を探っていきます。この場面はより多くの疑問を発見することに集中します。疑問の数だけ森を観る視点が広がり、更にはそれぞれの疑問の関係性についても視点が広がって行きます。

 4時間の「森探究」が終わるとホテルに移動して「室内探究」を開始。夕食や入浴を挟んで森探究で探ってきた沢山の「疑問」をチーム論議で絞り込んで行きます。「自分たちが本気で知りたかった疑問はこれだ!」とグループ全員が納得するまで論議が続きます。初日の大きな山場です。この間、富士山ネイチャークラブのガイドスタッフも控え室(相談室)で待機、随時生徒さんたちの相談に対応しました。グループの疑問が絞り込まれると疑問に対する仮説を考え、明日の現地検証方法を論議し、21:00初日の活動を終了しました。

 2日目の午前中は、再びフィールドに行って、疑問を解く「検証活動」を行いました。「現地解決型」活動を標榜する「森のフィールドワーク」の最も大事な場面です。「ありありと観察する」「現地現物で検証」「事実に基づいた検証」などを念頭に置いて、検証を深めて行きました。

 3時間程の検証時間はあっという間に過ぎました。現地検証で得られたデータや記録を入念に確認して、ようやく昼食タイム。笑顔が満ちあふれていました。

 現地での活動を終えて、ホテルに戻ります。

 ホテルに帰ると早速、明日の発表会に向けて論議がスタート。検証結果をどのようにまとめ、どのように発表するか、熱い論議が続きました。富士山ネイチャークラブのガイドスタッフも、各教室を巡回したり、控え室で生徒の相談に乗るなどで活動をバックアップしました。

 多くの事実(検証データ/記録)から、どんな相関性があるのかを多角的に検証して行きます。「森のフィールドワーク」最後の山場です。とことん論議してグループ全員の考えが集約したら、いよいよ翌日の発表会に向けた「発表資料(模造紙)」の作成に取りかかります。資料は「問い(疑問)」「仮説」「検証方法」「検証結果」「考察」の項目を立ててまとめていきます。更には、より分かりやすい発表とするためにグラフやスケッチなどを別紙で作成しました。そして明日の発表練習も行って21:00、2日目の活動を終了しました。

 3日目、いよいよ発表会の日です。30グループ(162名)が6つの教室に分かれて探究発表会が実施されました。10分の発表が終わると、質疑応答で更に核心の論議が続きます。最後に先生の講評が有り、参加した富士山ネイチャークラブのガイドスタッフからも講評を述べさせて頂きました。

■探究テーマ(抜粋)

・なぜヒメシャラの根元にはキノコやコケが生えていないのか

・木の種類によってコケの密度や生えている高さがどのように変わるのか

・コケはどのような環境を好み、その環境はコケの成長にどう影響するのか

・モグラが掘った場所はどのような共通点があるのだろうか

・スコリアが露出している土地としていない所では木にどのような違いがあり、その違いはなぜ生じるのか

・ザトウムシの個体差と生息地にはどのような関係があるのか

・森の中で音の聞こえ方は地形によってどのように変化するのか

・マスタケとサルノコシカケ科の育ちやすい環境について

・キノコの生える場所にはどのような傾向があるのか

・バイケイソウの生息地の特徴とは

・天然林と人工林の周りの土の性質にはどのような違いがあるのか、なぜ違いが生じるのか

■発表会での意見、講評(抜粋)

・声がはきはきとしていて、聞きやすかった。

・検証データの多さに驚いた。よくぞここまで検証した。(ザトウムシの数、ブナの実の数など)

・検証要素が不足していて、全体を捕らえていない。

・検証方法を実演してくれて、とても良く理解出来た。

・考察が浅い。良かったこと、悪かったことをもっと具体的に述べて欲しかった。次にどう繋げて行くかの視点が重要。

・専門用語が沢山出てきて、新しい分野を学んだことが分かった。

・検証データの指標作りに創意工夫が見られる。測定器がなくても、説得力がある。

・感覚的(足裏の感覚など)な指標も面白い、悪くない。

・「なぜだ、なぜだ」と突っ込んでいく発表内容は、探究学習の手本である。

・別紙データがとても分かりやすく、理解が進んだ。

・検証ポイントを地図上に示したのはとても良かった。

■校長先生からは、発表を聞いている側の講評として

・聞き手の質問の質が良い

・聞き手が、発表者が話しやすい雰囲気作りを行っている

とのお話しがありました。発表する側に注目するだけではなく、聞き手の姿勢も重要な役割を担っていることを改めてご指導頂きました。

 発表会終了後、宿舎の体育館で閉校式が行われ、3日間に渡る「森のフィールドワーク」が無事終了となりました。そして3年生になると「街のフィールドワーク」、高校生になると「海外でのフィールドワーク」が続きます。

 探究学習のプロセスは、将来社会人になって従事する「仕事モデル」そのものです。「現地発見・現地解決型」の取組みで、大きな社会問題に果敢に挑戦している将来の君たちを思い浮かべながらバスをお見送りしました。3日間、本当にお疲れ様でした。

  <リポート 田中>

開智日本橋学園中学校 サイト情報

開智日本橋学園中学・高等学校 – 学校法人開智学園 (kng.ed.jp)

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