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2021-11-12

2021年11月2日 富士山大室山/樹海 「スタッフ勉強会」

 8月に予定していた富士山麓での「スタッフ勉強会」はコロナの影響で延期していましたが、11月2日、ようやく実施の運びとなりました。講師に富士山科学研究所の中野隆志先生をお招きし、大室山周辺で「植物観察会」を行いました。日頃より何度も足を運んでいる場所ですが、中野先生のご指導の下、新しい視点や発見ができた充実の勉強会になりました。

 精進湖登山道沿いの原生林は864年(1157年前)長尾山の中腹から流れ出た溶岩台地の上にあり、とても若い森です。この森の魅力は、「すぐ近くに人が住んでいるところなのに、人手が入らず広い範囲で自然が残っているところ」と、中野先生。 一般に樹海と聞くと、どんな森だろうと想像は膨らみますが、案外人家は近くにあり、昔は炭焼きなど森を利用していた跡も残っています。しかし、森を切り開くような行為ではなかったので、自然が残っているのです。樹海を代表する樹木、ヒノキやツガの天然林は学術的にも貴重だそうです。

 自然は、同じ場所でも季節によって、植物もそこに生きる生き物たちも様子が変わります。今回はちょうど紅葉の季節。赤や黄色に色づくカエデの仲間は、日本には25種くらいあるといわれています。今回のフィールドでもウリハダカエデ、イタヤカエデ、カジカエデ、ヒトツバカエデ、コミネカエデ、コハウチワカエデ、ヒナウチワカエデなどの落ち葉が見つかりました。

 中野先生は、「富士山ではコミネカエデは多いが、ミネカエデは1度しか見ていない。オガラバナはより標高の高いところに多い。コハウチワカエデは葉柄が長いですが、ハウチワカエデは短いです」と、同じカエデでも標高による差、葉柄の違いなどを教えてくださいました。

 そしてこの季節は松ぼっくりなどの木の実も沢山落ちています。「鱗片をよくみると、ハリモミは丸い。イラモミは丸いが先が反り返る。トウヒはクローバーのように2か所凹む」という先生の指摘に、大きさだけではない細かな所の違いも確認出来ました。

 また、樹海でよくみられるソヨゴは明るい場所に、クロソヨゴは暗い場所と住み分けがあるのではないか、という話もしてくださいました。倒木などで生まれる林間ギャップでは、周辺の樹木が光を求めて明るい方へ、明るい方へと成長するのがよくわかります。中野先生からは、「植物は効率よく太陽光を利用し、うまく適応したものが生き残っている」という話も伺いました。枝の伸ばし方、葉の付き方に太陽光を取り込むための工夫が凝らされているのです。長枝と短枝が効率的に光を受けられるように成長しているアオハダも観察しました。

 樹木一本でもなぜそこに生えたのか、どのように成長しているのか、と考えると、また違った発見ができることがよくわかりました。今日教えて頂いたことを含め、富士山麓の植物の特性をより深く理解し、ガイドとして正しい情報を多くの方に伝えていきたいと思います。

 最後にお忙しい中、懇切丁寧にご指導頂いた富士山科学研究所の中野隆志先生に心から感謝の意を表します。

写真は勉強会の模様です。

<リポート 関口>

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