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Blog, イベント報告
2022-08-25

洗足学園中学高等学校 科学部 青木ヶ原樹海探索

 2022年8月5日・6日、富士山青木ヶ原樹海の環境が異なる二か所のフィールドをご案内しました。

 青木ヶ原樹海とは?

 西暦864年、富士山の北西斜面から大噴火が起こり、当時この辺りにあった巨木の森や湖などを埋め尽くしたのち、およそ1200年で現在の豊かな原生林として再生を果たした自然の宝庫です。

 まずは8月5日の午後、「精進湖自然観察路」のご案内です。この日のテーマは、平安時代までここに存在していた「せのうみ」という大きな湖に溶岩流が流れ込み、西湖と精進湖に分けてしまったその痕跡の観察でした。

 最初に、精進湖に向かって伸びる大きな溶岩のクラックを歩いて先端まで行ってみます。

 「溶岩ローブチュムラス」というかなり専門的な用語で解説いたしましたが、灼熱の溶岩流が「せのうみ」に次から次へと流入していくダイナミズムをそれぞれが感じてくださったと思います。

 湖側から再び樹海側に戻ります。

 精進湖に向かって、至る所に「溶岩ローブチュムラス」が延びています。

  樹海の中には、苔むしたたくさんの丸い溶岩球が点在しています。これは「枕状溶岩」と呼ばれるもので、水の中に流れ込んだ溶岩が急激に冷えて転がって出来たもので、その時代にはこの辺り(標高908m)は水の中だったことを表しています。

観察路では、猛毒のキノコ「カエンタケ」も観察出来ました。数年前から富士山周辺で大きな問題になっているカシノナガキクイムシが原因の「ナラ枯れ」。枯れた木の根元に「カエンタケ」がでることがあり、その関係性が疑われています。(注意:カエンタケは猛毒ですので触れることは厳禁です。)また、鹿の頭骨も発見しました。現在鹿の個体数が増え過ぎて、富士山麓の森林生態系バランスへの影響が懸念されてます。環境問題に触れるアイテムの出現に、皆さま興味津々で写真に収められていました。

この日のゴールは、ここ「釜畑」

 なんとなんと・・・、大量の溶岩流が湖に流れ込んだ際に出現した「水蒸気爆発」の跡なのです。

 普段は室内で実験などをされている科学部の皆さまですが、この富士山の噴火のスケールの大きさに、感無量の面持ちをされていました。

 8月6日、午前

 この日は、青木ヶ原樹海の中に100余りも点在するという溶岩洞窟の代表的なひとつである「富岳風穴」に入洞しました。

 総延長201m、高さは8.2mにおよぶ横穴です。平均温度はわずか3度。昭和初期まで蚕の卵の貯蔵に使われていたという天然の冷蔵庫です。夏でも溶けない氷柱に、皆さま歓声をあげられていました。

 この日探索するのは「東海自然歩道」。

 1973年に完成したこの遊歩道は、東京の高尾から大阪の箕面までつながっていますが、こうして青木ヶ原樹海の一部を通っていることは意外と知られていないのではないでしょうか。

 昨日歩いた青木ヶ原樹海と、どこが違うでしょうか? 

 さらに深く、高木層はツガやヒノキの針葉樹が天井を覆い、林床はアセビやクロソヨゴの常緑樹、そして生い茂るコケやシダ。これらの様相が「青木ヶ原」の名前の由来となっていることをお伝えすると、昨日の場所よりもこちらのほうが典型的な青木ヶ原樹海であることを理解してくださったようでした。

 ゴールは「鳴沢氷穴」です。

最後に、「昨日と今日で一番印象に残った物や事を、一人一つ教えてください。」と聞いてみました。直近の溶岩洞穴が多いのでは?と想像したのですが、前日の「カエンタケ」や「鹿の頭骨」、「水蒸気爆発」といった精進湖自然観察路での事柄が多く出てきました。もちろんこの日に観察した「コケとシダの違い」や「菌根菌」「1200年前の氷」などの回答もあり、一人一人がそれぞれに印象に残る体験をして頂けたと思います。

 この二日間で見たり聞いたり感じたりしたこと、そうして「なぜこうなったんだろう?」と考えたことが、これからの皆さまの宝物になって行くのではないでしょうか。

 富士山の創ったこの素晴らしい自然の懐をご案内させていただいて、本当にありがとうございました。

<リポート 舟津川>

  

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